- 本記事では、創業1年以内の経営者が銀行に融資相談するケースを書いています。
- 何となく「地元銀行と付き合っていた方がいいのでは」、と考えている経営者の方は参考にしてみて下さい。
- 結論:力試しで銀行と付き合うフェーズではないと思います。
事業性融資とは
本記事で定義する融資相談とは、「法人または個人事業主がする事業性融資の相談」とします。
事業性融資とは何か。
反対語には消費性融資があり、すなわち住宅ローンやマイカーローンです。
【消費性融資】
住宅ローンやマイカーローンの返済原資は、借主の所得です。給与所得をもらうサラリーマンであれば、その給与を返済原資とします。
給与を出すのは、当然その人の勤務先です。つまり、審査を行う側からすると、重要なのはその借入申込人ではなく「借入申込人の勤務先」であるわけです。
「借入申込人の勤務先」が上場企業であったり、地元の代々続く優良企業であったりすると、借入申込人に支払われる給与に安定性があり返済が可能と判断されます。
逆に、今にもつぶれそうな会社(があるとして)に勤めていれば、返済原資である給与が支払われない可能性が出てきます。そうすると、その借入申込人に対する審査は厳しいものになるでしょう。
もちろん、借入金額や期間などその他条件も審査対象になるので、一概には言えませんが勤務先は審査において重要事項であることは間違いありません。
【事業性融資】
一方で、事業性融資は「事業による収益を返済原資とした融資」です。
借入人は「事業」を行う法人または個人事業主となります。
「事業」とは、商品やサービスを提供することで対価を得る活動です。例えば、小売業(スーパーなど)や建設業(土木工事や住宅ハウスメーカー)など、業種は日本標準産業分類の大分類によると20種類に分けられます。(中分類では33種類となる)
「事業による収益」とは。例えば、「運転資金」を借りることで事業が回り、それによって生み出された収益が返済原資となります。「設備資金」を借りることで、新たな価値を見出し生み出される収益が返済財源となります。
法人や個人事業主が融資を受けるときに、「事業として使うんだ」と言えば大体のものは事業性融資として取り扱うことができます。しかし、資金使途として不適格なものもあります。例えば、「自宅」です。事務所ではなく、単に自分が住むための自宅を購入する場合はいくら「事業として使う」と言っても無理があります(自宅を「事務所」として建築確認申請を行う裏技はありますが、、、)。そういう場合には、「事業性融資」ではなくて「消費性融資」として審査を行う、ということになります。
「事業性融資」と「消費性融資」では審査を行うルートや観点が違うということです。
実例に基づく失敗例
では、いざ融資相談に銀行に出向くケースを想定します。
あなたは今、創業1年以内の会社代表者だとします。
創業時の相談は、町の商工会議所や商工会に行かれたことでしょう。または、司法書士や専門のコンサル会社にするかもしれませんが、今回は一旦商工会議所または商工会に最初に相談するケースについて書いていきます。
【商工会議所、商工会】
商工会議所等は、中小企業に対する経営支援を行っている団体です。会社を立ち上げたての経営者にとって親身に相談に乗ってくれる、とても頼りになる存在です。
その相談内容の一つに「資金調達」があります。資金調達の方法は主に、「融資」、「補助金や助成金」、「ベンチャーキャピタルの出資」があります。そのうち「融資」についても、あまり知られていませんが商工会議所等で支援してくれます。
【日本政策金融公庫】
商工会議所等が「融資」を支援する場合、「日本政策金融公庫」と連携することになります。「日本政策金融公庫」とは、政府系の金融機関です。預金口座は持たず「融資」のみを取扱います。一般の銀行との違いは、設立目的等ありますがここで一番重要な違いは「審査の通りやすさ」です。日本政策金融公庫は審査が通りやすいのです。創業支援を目的とした融資メニューがあり(当然銀行にもありますが)、政府系ということもあり、初めての融資には最適の金融機関であると思われます。
そこであなたは、商工会議所のあっせんを受けて日本政策金融公庫との相談に至り融資を受けることになります。つまり、あなたは初めての融資は「日本政策金融公庫」から受けることになります。銀行に相談に行く前に。
【銀行との付き合い】
その後、何か月かして思うことでしょう。「地元の金融機関とも付き合っておいたほうがいいのではないか」と。始めは右も左もわからず、ただ進められるがまました日本政策金融公庫との融資取引ではあるが、「活動拠点にある金融機関にお世話になることもあるかもしれない」「今後事業が大きく発展していけば、地元金融機関に融資相談をする可能性もあるかもしれない」そう感じて、「取り敢えず地元金融機関と接点を持つ意味でお金を借りておいたほうがいいかもしれない」と考えることがあると思います。実際に、そのような考えで融資相談に来られたケースがあります。
悪くはありません。むしろ金融機関にとっては、新規融資先が増えるためありがたい相談になります。
この場合、最大の問題は「資金使途」なのです。つまり、借入したお金は何に使うのかということです。民間の銀行にとって「資金使途」は重要な問題です。
融資するお金の出どころは、お客様から預けていただいている預金なのです。
極端な例を挙げます。もしあなたが預金していた銀行が、犯罪組織に融資していたとします。その場合、犯罪組織に渡ったお金は、あなたが預金したものです。あなたはそんな銀行にはお金を預けたいとは考えず、すぐにその銀行口座を解約し他に移すでしょう。銀行は預金を集め、その預金を融資し、その利息を主な収入源とします。その預金者(みなさま)の納得のいかない融資はできない、ということです。
【資金使途】
だったら、納得のいく「資金使途」であればいいんでしょう。そうお考えになると思います。しかし、このケースでは納得のいく資金使途となるのが難しいのです。
その理由は、「創業にあたり、既に他で融資を受けているから」です。創業資金として、日本政策金融公庫から借入したときにあなたは「創業計画書」を提出します。その「創業計画書」の内容には、長期的(5~7年スパン)な売上や利益の計画が盛り込まれています。その中に、融資をいついくら受けて、年間いくら返済していくのかも入っています。当然、計画時点の話なので日本政策金融公庫から融資を受けることが盛り込まれています。一方で、他の銀行から融資を受ける計画にはなっていないのです。
前提として、あなたは「創業から1年以内の会社代表者」ですので日本政策金融公庫から融資を受けてからも1年経っていません。その状態で、他の銀行で借入相談をするとどうなるか。その「創業計画書」の信ぴょう性が薄くなります。
つまり、その「創業計画書」はあてにならないから、融資相談されてもマイナスイメージからスタートします。「創業計画書」ではこれ以上借りる必要がない、という計画なのにこれ以上何のために借りますか?もしかして、事業がうまくいっていないんですか?そんなに早く資金不足になるなら、やめた方がいいんじゃないですか?という見方です。
そこをうまく納得させるだけの、「資金使途」はあなたにはありますか?なかなかありませんよね。そうなんです。1年以内に創業資金を借りられているあなたには、「今」資金が必要な理由はないのです。ですから、今は「お金を借りない」ことが正解だということです。
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